OCNエコノミーへの長い道
第13部 ディジタルリーチ
 
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第36章 ディジタルリーチの認可申請

NTTが新しい専用線サービスを始めるらしい。1998年7月22日、NTTは新しい低価格の専用線接続サービスであるディジタルリーチのサービス提供について、郵政省に認可を申請した。認可後速やかに、早ければ8月3日頃からのサービス開始を目指しているという。

このディジタルリーチは、ディジタルアクセスの30キロ超版と言えるもので、今までディジタルアクセスで提供できなかった、30キロを超える低価格の専用線接続をサービスしようというものである。例えば、これまで40kmであれば、ディジタルアクセスが使えないので高価なHSD専用線しか選択肢がなく、毎月のランニングコストが64kb/sで12万9000円であったのが、ディジタルリーチを使えば、4万7000円からと、3分の1程度になる。

前回、日本テレコムの奈良POIへの接続は、30kmでディジタルアクセスを使える距離であるにもかかわらず、県外への接続ということでサービスを拒否された。県内の津POIは35kmでディジタルアクセスを使用できなかったが、ディジタルリーチで接続できるようになるのではないか。津POIでODNエコノミー2に接続すれば、日本テレコムへの相互接続となるので、月額料金もさらに大幅に安くなる。なんとか個人でも手の届くぎりぎりの範囲に収まりそうである。

HSDとディジタルリーチ
回線種 HSD ディジタルリーチ
回線速度 64kb/s 64kb/s
回線距離 31〜40km 31〜40km
月額料金 129,000円 47,000円〜

第37章 県間に限定

ところが、ディジタルリーチの認可申請内容について、NTTのニュースリリースをよく読んでみると、「県間専用回線」とある。この県間とはいったいどう言う意味なのだろうか。

県境を超えての相互接続ができなかったり、県境を超えると回線が遠回りになるなど、これまでのやりとりから推定すると、県内のみの接続に限り、県境を超えての接続はできないという意味ではないかと思われた。しかし、別のニュース記事を読んでみると、県境をまたぐ接続に限定され、県内に終始する接続には使えないとある。これは、これまでのことと矛盾している。これでは使えない。

7月24日、NTTの専用線部門に、ディジタルリーチの矛盾点について問い合わせた。その内容は、「ディジタルリーチが県境を超えての接続に限定されるのはどういう理由からか。県境を超えると回線距離が遠回りで長くなり相互接続も許されないのに、回線距離が短い県内の接続より安くなるのはおかしくないか。本来ならば、県内に限定したサービスから開始するべきなのではないか。」というものである。担当者の返答は、すぐには分からないので調べて後で電話するということであった。


第38章 認可を阻止せよ

ディジタルリーチはまだ認可の申請中で、郵政省に認可されなければサービスを開始することはできない。私は、ディジタルリーチの問題点を指摘し、郵政省に対して申請通り認可しないように要請することにした。郵政省に出した意見は次のようなものである。

「NTTがディジタルリーチの認可を申請したが、これは、利用者にとって大変不公平なサービスである。ディジタルリーチは、県境を越えての接続にしか使用できず、県内に終始する接続に使用することができない。例えば、私の住む三重県の上野MAからは、県内の他のMAへの距離がすべて30キロを超えているため、県内へはディジタルアクセスを利用することができない。日本テレコムのODNの専用接続サービスを利用したいのだが、接続地点となる津までは、35kmで、ディジタルアクセスを利用することができず、高価なHSD専用線のみとなる。今回のディジタルリーチでは、30kmを越える接続が安価にできるそうだが、県内への接続ができないため、利用できない。今回のディジタルリーチの認可に当たり、接続を県境を越えての接続に限定せず、県内接続にも利用できるようにする事を条件に認可されるよう、強く希望する。」

また、橋本内閣に代わり小渕経済再生内閣が誕生し、野田聖子氏が新しく郵政大臣に就任した。同じ内容のメールを野田郵政大臣にも送り、ディジタルリーチを申請通り認可しないように訴えた。しかし、意見提出の甲斐もなく、ディジタルリーチはあっけなく認可されてしまった。


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